ランプの変遷

亜旧石器時代(前18000-前8500年)から前土器新石器時代(前8500-前5500年)すなわちまだ土器の使われていなかった時代には、貝や石の器がランプとして用いられていたようです。

前5000年期から前4000年期は、手製の小さな碗状の土器がランプの用を足していたようですが、へりにすすの跡が残されていないかぎり、通常の食用碗と形の上では何ら区別できません。

初期青銅器時代(前3300年-2200年)になっても、通常の小さ食用碗がランプの役割を果たし続けます。展示の最初のものは、形は食用碗と同じですが、へりに何カ所かススの跡が認められます。

初期青銅器時代
前3000年期
9.5cm

初期青銅器時代から中期青銅器時代への移行期(前2200-前2000年。また初期青銅器時代IVとも中期青銅器時代Iとも言われます)になって、ランプの場合は灯心を置くのに四隅を溝のようにし、浅い皿の形にして区別するようになりました。手製のものと、ろくろをゆっくり回して作ったものとが考えられます。

中期青銅器時代
前2000年ごろ
12.5cm

中期青銅器時代(前2000-前1500年)に入ってから、普通の形では灯心のための溝が一つとなり、最初のうちはそれがあまり強調されていませんでしたが、だんだんとその溝が顕著になっていきます。ろくろ製。

中期青銅器時代
前1700ごろ
12.5cm

さらに、この形は後期青銅器時代(前1550-前1200年)にも引き継がれます。

後期青銅器時代
前1550-1200年
14cm

溝が一つの皿型ランプは、この後さらにまた鉄器時代(前1200-前586年)、ペルシャ時代(前586-前332年)へと続きます。へりが広く大きくなり、外にめくれて、皿の深さが浅くなっていきます。

アレキサンダー大王のへレニズム世界になって、ランプの形や製法にも大きな変化が生じます。ギリシャランプに倣ってそれまでの溝がノズルに代わり、皿の上が閉じられて注油口がその上に付けられます。前2世紀には上部と下部を型によって作り、合わせる製法が、ろくろ製法より一般的になります。

ヘロデ時代(前37-後135年)には、パレスチナ地方では「ヘロデランプ」と呼ばれるランプがよく用いられました。ノズルの部分が扇状に突き出ています。ろくろ製のものと型製のものがあります。展示の7番目のものはノズルの先の部分が少し欠けていますが、明らかに扇状型です。ろくろ製。展示のものは6センチメートルですが、10センチメートル前後のものも多くあります。マタイの福音書の「十人の娘のともしび」は、ヘロデランプの一種であったと思われます。

ヘロデ時代
前37-後135年
6cm

以上のものは日常生活のごく身近なランプですが、用途が違えば他の形状を取りました。一例を挙げると、エリコの前1700年ごろの墓から出てきた7つの溝のついたランプがあります(所蔵品なし)。旧約聖書ゼカリヤ書4章2節の「七つの管がついたともしび皿」を想わせます。

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