主イエスやパウロの「宣教経路」を考古学的に調べたものは、わが国では多くない。 福音が伝わりはじめた時代、ローマ帝国や、ユダヤには軍事、交易、その他一般に用いられる道があった。これを調べる手がかりとして、ローマが1マイルごとに立てたマイルストーン(道路標識)や街道遺跡、ローマ時代の地図写本、歴史地理の古典文書類、などが存在するが、これらの史料と聖書の記述はどれほど整合性があるのか、また、聖書以外の史料を用いて聖書の歴史的、地理的記録の真実にどこまで近づけるのだろうか。
ローマ帝国が勢力を広げるにしたがって、街道も、マイルストーン設置も拡大し、ローマ帝国の道路網は整備された。聖書に関係する地域の主要幹線街道は 以下のような流れで成立している。イタリヤ・アッピア街道(紀元前4世紀)、ギリシア・エグナチア街道(紀元前2世紀)、トルコ・マニオス アクイリウス街道(紀元前2世紀) セバスティア街道(紀元前1世紀)、イスラエル(1世紀末)。時代の変遷とともに、ローマ道路もマイルストーンも人々の記憶から忘れ去られ、放置されたが、20世紀初頭あたりから、それらの歴史的価値が見直されるようになり、現在では100年を超える研究の蓄積がある。
パレスチナの場合、現在、600余個のマイルストーンが発見され研究されている。マイルストーン個々の発見地をつなぐと、そこに現れた軌跡が、その時代の街道ルートである。そのほか、地図、旅程表、地名辞典などの経路に関連する写本類が現存する。 これらを通して、ユダヤを含むローマ世界の地名、経路と都市間の距離、街道の成立年代などの情報を得ることができる。
講演の主要な目的は、現存する諸史料を紹介して、解説を加え、それをもとに新約聖書時代の宣教経路を検討して、神のみ言葉の歴史的真実に近づくことである。
日時
2015年6月20日(土) 午後2時~4時
場所
お茶の水クリスチャンセンター 415号室
講師
原口貞吉先生