旧約聖書のなかには、夢を見る人たちと、その人たちが見た夢についての物語が数多くおさめられています。夢は、神が人間にメッセージを伝達するときに用いた手段として、聖書のなかでとても重要な位置を占めるものです。夢のなかには、一見してその意味(すなわち神の意思)が私たちに伝わってくるものもありますが、他方で、象徴に満ちあふれているために、解釈されることによってでしか、私たちがその意味を知り得ないものとがあります。解釈が必要とされる夢の物語は、外国の王宮に舞台が置かれる場合が多いのです。ヨセフはエジプトの宮廷で、ダニエルはバビロニアの王宮で、神の霊に満ちた賢者として、王たちが見た謎に満ちた夢を解き明かすことに成功しました。
このような夢の物語を通して、聖書はわたしたちにどのようなメッセージを伝えようとしているのでしょうか。なぜ、夢なのでしょうか。解き明かしが必要な夢とそうでない夢とは、なにが違うのでしょうか。夢を解き明かすということは、どのような営みだったのでしようか。そもそも、夢の解き明かしの物語はなにゆえに外国の王宮を舞合にしていることが多いのでしょうか。聖書の夢物語を深く味わってみましょう。
また、聖書の夢がどのように解き明かされたのかということについて助けとなるのが、メソポタミアの文書に記録された夢とその夢に対する解釈のありかたです。聖書の夢とその背景をなすメソポタミアの夢との比較を試みながら、わたしたちも、聖書のなかの夢という、神から人間へのメッセージの一つの手段について「解き明かして」いきたいと思います。
日時
第1回 2012年10月29日(月)午後6時半~8時
「聖書の『夢』物語:内容と類型」
第2回 2012年11月26日(月)午後6時半~8時
「メソポタミアの『夢』とその解釈:旧約聖書の背景として」
第3回 2012年12月10日(月)午後6時半~8時
「旧約聖書の『夢』と夢解釈の技法」
講師
高井啓介氏(慶感義塾大学・明治学院大学非常勤講師)
場所
OCC416号室